対象業務

特別教育が必要な業務の一覧|安衛則36条の対象業務を分野別に整理

運営・編集:安全教育台帳編集部

「うちの現場、どの作業に特別教育が要るのか一覧で把握したい」という方へ

新しい設備を入れた、応援の作業者が増えた、元請から安全書類の提出を求められた——そんなタイミングで「結局、特別教育(危険・有害業務に就かせる前に事業者が行う法定の教育)が必要な業務って全部で何があるのか」を体系的に確認したくなる方は多いはずです。この記事では、労働安全衛生規則36条に定められた対象業務を分野別に整理し、学科・実技の時間の目安、記録の残し方までまとめます。

結論:対象業務は約49、分野で覚えると漏れが減る

結論から言うと、特別教育の対象業務は労働安全衛生規則(以下、安衛則)36条に列挙された約49の業務です。事業者は、労働者を「危険又は有害な業務」に就かせるときは、その業務ごとに安全又は衛生のための特別教育を行わなければならないと労働安全衛生法59条3項に定められています。

49業務を丸暗記するのは現実的ではないため、実務では次のように分野で把握すると漏れを見つけやすくなります。

  • 研削・溶接系(研削といし、アーク溶接等)
  • 電気取扱い系(高圧・特別高圧、低圧)
  • 車両系建設機械・運搬系(小型車両系建設機械、不整地運搬車、フォークリフト1t未満等)
  • クレーン・揚重・玉掛け系(クレーン、移動式クレーン、玉掛け、高所作業車等)
  • 産業用ロボット系(教示等、検査等)
  • 高圧室内・潜水・送気系
  • 化学物質・粉じん・石綿・酸欠系
  • 高所・足場・墜落制止系(足場の組立て等、フルハーネス型墜落制止用器具等)

どの分野に該当する作業を自社で行っているかを洗い出すことが、対象業務の見極めの第一歩です。

分野別の対象業務と学科・実技の時間(安全衛生特別教育規程)

学科・実技それぞれ何時間の教育が必要かは、安衛則36条ではなく安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)という別の告示に、業務ごとに定められています。代表的な業務を分野別に抜き出すと次のとおりです(2026年時点の規定。学科・実技の時間は「h」表記、実技0は学科のみで実技なしを意味します)。

分野業務(安衛則36条の号)学科実技合計
研削・溶接アーク溶接等の業務(3号)11h10h21h
電気取扱い電気取扱い・低圧(4号)7h7h14h
電気取扱い電気取扱い・高圧/特別高圧(4号)11h15h26h
車両・運搬フォークリフト1t未満の運転(5号)6h6h12h
クレーン・揚重玉掛け・つり上げ荷重1t未満(19号)5h4h9h
クレーン・揚重高所作業車・作業床の高さ10m未満の運転(10号の5)6h3h9h
高所・墜落制止フルハーネス型墜落制止用器具を用いた業務(41号)4.5h1.5h6h

たとえば「アーク溶接は学科11時間+実技10時間=計21時間」「フルハーネス型墜落制止用器具は学科4.5時間+実技1.5時間=計6時間」というように、同じ「特別教育」でも業務によって拘束時間はかなり異なります。低圧の電気取扱いは学科7時間+実技7時間で計14時間、玉掛け(1t未満)は学科5時間+実技4時間で計9時間です。この時間はどれも省略できない法定の下限であり、自己流に短縮すると教育を行ったことになりません。

ここに挙げたのは代表例です。自社の作業者がどの業務に就いていて、どの特別教育が何時間必要かを一つずつ確認したい場合は、特別教育 要否チェッカーで従事業務を選ぶと、必要な特別教育と学科・実技の法定時間、根拠となる号番号がまとめて表示されます。

教育計画を立てる際は、対象人数を掛け合わせた総拘束時間で考えると現実的です。たとえばアーク溶接の特別教育を対象作業者3名に実施する場合、学科の受講時間は 11×3=33(時間)分の枠を確保する必要があり、実技も 10×3=30(時間)分が別途かかります。人数が増えるほど日程調整の負担が大きくなるため、早めに計画しておくことが重要です。

自社で確認・対応する手順

対象業務の一覧を眺めるだけでは実務は進みません。次の順番で自社の状況に落とし込みます。

  1. 従事業務の洗い出し:作業者ごとに、日常的に行っている作業・今後就かせる予定の作業を書き出す。応援・繁忙期のみの作業者も対象から漏らさない。
  2. 該当する特別教育の特定:洗い出した業務が安衛則36条のどの号に当たるかを確認する。似た名称でも規模(重量・高さ等)で要件が変わる業務があるため注意が必要です(次章で解説)。
  3. 未受講者の特別教育の実施:該当する特別教育をまだ受けていない作業者には、業務に就かせる前に学科・実技を修了させる。社内実施・外部講習のどちらでも可能ですが、規定の科目・時間を満たす必要があります。
  4. 記録の作成と保存:事業者は特別教育を行ったときは、受講者・科目等の記録を作成し、これを3年間保存しなければならないと安衛則38条1項に定められています。氏名・実施日・科目・時間・修了の有無を記録に残します。
  5. 監督署・元請対応への備え:労働基準監督署の臨検や、元請からの安全書類提出の際に、いつでも記録を提示できる状態にしておく。

記録を作らず・保存しなかった場合は安衛法120条により50万円以下の罰金の対象になり得ます。また、そもそも特別教育を行わずに危険・有害業務に就かせた場合は安衛法119条により6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象になり得ます。「実施したかどうか」と同じくらい「記録が残っているかどうか」が問われる点は見落とされがちです。

注意点・誤解しやすいポイント

技能講習・免許との取り違えが最も多い誤解です。同じ業務でも規模が一定を超えると、特別教育ではなく技能講習(安衛法76条)や免許(安衛法72条)が必要になります。たとえばフォークリフトは最大荷重1t未満なら特別教育(36条5号)で足りますが、1t以上は技能講習(施行令20条11号)が必要です。玉掛けもつり上げ荷重1t未満は特別教育(36条19号)、1t以上は技能講習(施行令20条16号)というように、境界が業務ごとに異なります。「同じ名前の作業だから同じ教育でよい」と思い込むと不足につながります。

保存期間の誤解も多く見られます。安衛則38条の3年保存は「保存しておかなければならない期間の下限」であり、3年経過したら記録を捨ててよいという意味ではありません。作業者が在籍している間は、実務上は保存を続けておく事業者が大半です。また、特別教育そのものには技能講習のような更新制度はなく、一度修了すれば同じ業務について再度受け直す法定義務はありません(別業務に新たに就く場合は、その業務の特別教育が別途必要です)。

実技の省略規定の誤適用にも注意が必要です。規程によっては、他の資格保有者等について実技の一部を省略できる規定が置かれている業務がありますが、適用できる条件は業務ごとに細かく定められています。自己判断で「経験者だから実技は省略してよい」と広く解釈するのは危険です。対象業務の該当性や省略規定の適用など個別の取り扱いは、所轄の労働基準監督署や労働安全コンサルタント等の専門家にご確認ください。

特別教育の受講記録や修了証、3年保存の管理をクラウドで一元化したい場合は、14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)で試すこともできます。

まとめ

自社に必要な特別教育を確実に洗い出し、実施と記録を両立させるために、次のポイントを押さえておきましょう。

  • 特別教育の対象業務は安衛則36条に約49業務が定められており、根拠は安衛法59条3項
  • 学科・実技の時間は業務ごとに異なり、安全衛生特別教育規程(告示92号)で定められている(例:アーク溶接は計21時間、フルハーネスは計6時間)
  • 特別教育を行った場合は受講者・科目等の記録を作成し、安衛則38条により3年間保存する義務がある
  • 未実施は安衛法119条、記録未保存は安衛法120条の罰則対象になり得る
  • 同じ作業でも規模によって特別教育と技能講習・免許のどちらが必要かが変わるため、規模要件の確認が欠かせない

自社の作業者に必要な特別教育を業務ごとに確認したい方は、特別教育 要否チェッカーで実際に選択してみることをおすすめします。学科・実技の時間と根拠の号番号がその場で確認できます。

よくある質問

Q. 特別教育の対象業務は全部でいくつありますか?

2026年時点の規定では、労働安全衛生規則36条に約49の業務が列挙されています。研削・溶接、電気取扱い、車両系建設機械・運搬、クレーン・揚重・玉掛け、産業用ロボット、高圧室内・潜水・送気、化学物質・粉じん・石綿・酸欠、高所・足場・墜落制止といった分野に分かれます。最新の号数・追加業務はe-Gov法令検索で確認できます。

Q. 特別教育と技能講習はどう違いますか?

特別教育は安衛則36条に定める危険・有害業務に就かせる前に事業者が行う法定教育で、原則として事業者自身が実施できます。一方、技能講習(安衛法76条)は登録教習機関が実施し、修了すると就業制限業務(安衛法61条・施行令20条)に就くことができます。フォークリフトや玉掛けのように、同じ作業でも重量等の規模によってどちらが必要かが分かれる業務があります。

Q. 特別教育の記録は何を残せばよいですか?

安衛則38条1項により、特別教育を行ったときは受講者、科目等の記録を作成し3年間保存する義務があります。実務上は氏名、従事業務、実施した科目(学科・実技)、実施日、修了の有無を記録に残しておくと、監督署の臨検や元請の安全書類提出にも対応しやすくなります。

Q. 特別教育に有効期限はありますか?

特別教育そのものには、技能講習のような更新(再教育)の法定義務はありません。一度修了した業務については、原則として再度受け直す必要はありません。ただし記録は安衛則38条により3年間保存する義務があり、これは教育の有効期限ではなく記録の保存義務である点に注意が必要です。

Q. 一覧にない業務の場合はどうすればよいですか?

本記事で挙げたのは代表的な業務です。自社の作業が該当するかどうかの判断に迷う場合や、規程本文の細かい適用条件を確認したい場合は、対象業務の該当性や省略規定の適用など個別の取り扱いについて、所轄の労働基準監督署や労働安全コンサルタント等の専門家にご確認ください。

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参考にした一次情報

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