結論:玉掛けは「つり上げ荷重1トン未満なら特別教育、1トン以上なら技能講習」
結論から言うと、クレーン・移動式クレーン・デリックで玉掛け(つり上げようとする荷にワイヤロープ等を掛けたり外したりする業務)を行わせる場合、対象とする装置のつり上げ荷重が1トン未満か1トン以上かで必要な教育・資格が変わります。1トン未満は労働安全衛生規則第36条第19号に基づく特別教育(安全衛生特別教育規程により学科5時間+実技4時間の合計9時間)で足りますが、1トン以上は労働安全衛生法施行令第20条第16号に基づく玉掛け技能講習の修了が必要で、特別教育では就業させられません。対象装置の該当性や実技の一部省略規定の適用など個別の判断は、所轄の労働基準監督署や登録教習機関・労働安全コンサルタント等の専門家にご確認ください。
なぜ1トンで線引きされるのか(根拠条文と時間数)
事業者は、危険または有害な業務に労働者を就かせる前に、業務ごとに定められた学科・実技の特別教育を修了させなければなりません(労働安全衛生法第59条第3項)。対象業務は労働安全衛生規則第36条に約49の号として列挙されており、玉掛けの業務は第19号に「つり上げ荷重が1トン未満のクレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛けの業務」として定められています。
一方、つり上げ荷重が1トン以上のクレーン・移動式クレーン・デリックの玉掛けは、特別教育では対応できない「就業制限業務」です。事業者は、政令で定める業務については免許を受けた者か技能講習を修了した者などでなければ就かせてはならないと定められており(労働安全衛生法第61条)、玉掛け業務は労働安全衛生法施行令第20条第16号で「制限荷重が1トン以上の揚貨装置又はつり上げ荷重が1トン以上のクレーン、移動式クレーン若しくはデリックの玉掛けの業務」として指定されています。この技能講習は、都道府県労働局長の登録を受けた教習機関(登録教習機関)が実施し、修了者に修了証を交付します(労働安全衛生法第76条)。
つり上げ荷重1トン未満の玉掛け特別教育の学科・実技の時間は、安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)に定められています。他の主な特別教育と並べると、時間数の位置づけがわかりやすくなります。
| 業務(安衛則36条の号) | 学科 | 実技 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 玉掛け(1t未満・第19号) | 5時間 | 4時間 | 9時間 |
| フォークリフト(1t未満・第5号) | 6時間 | 6時間 | 12時間 |
| 高所作業車(作業床の高さ10m未満・第10号の5) | 6時間 | 3時間 | 9時間 |
| アーク溶接等(第3号) | 11時間 | 10時間 | 21時間 |
| フルハーネス型墜落制止用器具(第41号) | 4.5時間 | 1.5時間 | 6時間 |
玉掛け特別教育は学科5時間+実技4時間で合計9時間となり、フォークリフト(1t未満)の12時間より短く、フルハーネスの6時間より長い、中位の時間数です。教育時間は1人あたりの時間数なので、対象人数分は単純にかけ算で見積もれます。たとえば、これから玉掛け業務に配置する作業者が3人いる場合、1人あたりの教育時間(学科5時間+実技4時間=9時間)に人数をかけて 9×3=27 、合計27時間が必要な総研修時間の目安になります。社内で講師を確保するか、登録教習機関にまとめて委託するかを判断する材料になります。自社の作業者がどの特別教育の対象になるかを確認したい場合は、特別教育 要否チェッカーで従事業務を選ぶだけで必要な教育と時間数を確認できます。
自社で確認・対応する手順
玉掛けの業務に労働者を漏れなく適法に就かせるには、次の順序で確認・対応を進めます。
- 対象装置のつり上げ荷重を確認する:現場で使用するクレーン・移動式クレーン・デリックのつり上げ荷重(能力)が1トン未満か1トン以上かを装置ごとに確認します。同じ現場に複数の装置がある場合、装置によって必要な教育・資格が異なることがあります。
- 未修了の作業者を洗い出す:玉掛けの経験があっても、対象装置に応じた特別教育または技能講習を修了していなければ業務に就かせることはできません。
- 特別教育の実施、または技能講習の受講を手配する:1トン未満のみを扱う場合は学科5時間・実技4時間の特別教育、1トン以上を扱う場合は登録教習機関の玉掛け技能講習の受講を手配します。
- 記録を作成し3年間保存する:受講者・科目・時間数・実施年月日・指導者などを記録し、労働安全衛生規則第38条に基づき実施日から3年間保存します。技能講習修了者については、技能講習修了証の写しなど資格を確認できる記録も併せて管理しておくと、元請の安全書類や監督署の立入時にも対応しやすくなります。
このうち作業者ごとの受講記録・修了証・保存期間の管理は、担当者の異動やExcel台帳の増加とともに抜け漏れが起きやすい部分です。14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)では、作業者ごとの特別教育の受講記録と保有資格をまとめてクラウドで管理でき、サインアップからすぐに試すことができます。
注意点・誤解しやすいポイント
玉掛けの教育・資格をめぐっては、次のような勘違いが起きがちです。
特別教育と技能講習の取り違え:つり上げ荷重1トン未満の玉掛け特別教育を修了しているだけでは、1トン以上の装置での玉掛け業務には就かせられません。逆に技能講習修了者は1トン未満の業務にも従事できますが、社内で「玉掛けの資格がある」とひとくくりに管理していると、この境界を見落としがちです。
実技の省略規定の誤適用:他の関連する技能講習・特別教育を修了している者などについて、実技の一部が省略できる場合がありますが、これは規程上の要件に該当する場合に限られます。経験年数が長いからといって自己判断で教育・講習を省略することはできません。
保存期間の誤解:特別教育も技能講習も、修了すればよく法定の定期的な再教育(更新)義務はありません。一方で特別教育の記録は労働安全衛生規則第38条により実施日から3年間の保存義務があり、この2つを混同しないことが重要です。
罰則:1トン以上の玉掛け業務に技能講習修了者以外を就かせた場合や、1トン未満の業務で特別教育を実施しないまま就業させた場合は、労働安全衛生法第119条により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となり得ます。記録の作成・保存を怠った場合も同法第120条により50万円以下の罰金の対象となり得ます。玉掛けの不備は吊り荷の落下・転倒など重大災害に直結しやすいため、特別教育 要否チェッカーで対象業務・時間数を確認したうえで、記録の整備まで進めておくことをおすすめします。
よくある質問
Q. 玉掛けの特別教育は、具体的に何時間受ければよいですか。
2026年時点の規定では、つり上げ荷重1トン未満のクレーン・移動式クレーン・デリックの玉掛けについて、安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)に基づき学科5時間+実技4時間の合計9時間です。1トン以上を扱う場合は特別教育ではなく玉掛け技能講習の修了が必要です。
Q. 玉掛け特別教育と玉掛け技能講習は、どちらを受ければよいですか。
現場で使用するクレーン・移動式クレーン・デリックのつり上げ荷重で判断します。1トン未満のみを扱うのであれば特別教育で足りますが、1トン以上を扱う可能性がある場合は労働安全衛生法施行令第20条第16号に基づき玉掛け技能講習の修了が必要です。判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署や登録教習機関にご確認ください。
Q. 玉掛け技能講習を修了していれば、1トン未満の玉掛け特別教育は別途不要ですか。
はい。技能講習は特別教育の対象範囲を包含する上位の資格にあたるため、玉掛け技能講習を修了していれば、つり上げ荷重1トン未満の玉掛け業務にも重ねて特別教育を受ける必要はありません。
Q. 玉掛けの特別教育・技能講習の記録は、何年保存すればよいですか。
特別教育については労働安全衛生規則第38条により、受講者・科目・時間数・実施年月日等の記録を作成し、実施日から3年間保存する義務があります。技能講習修了証についても、就業制限業務に従事させる根拠として、写しなど確認できる記録を保管しておくことが実務上望まれます。
Q. 玉掛けの業務に必要な教育を実施せずに作業させると、どうなりますか。
労働安全衛生法第119条により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となり得ます。また、特別教育の記録の作成・保存を怠った場合は同法第120条により50万円以下の罰金の対象となり得ます。
まとめ
- 玉掛けは対象装置のつり上げ荷重で必要な教育が変わり、1トン未満は特別教育(安衛則36条第19号・学科5時間+実技4時間=合計9時間)、1トン以上は技能講習(施行令20条第16号)
- 技能講習修了者は1トン未満の業務にも従事できるが、特別教育のみでは1トン以上の業務には就かせられない
- 実技の省略は規程上の要件に該当する場合に限られ、経験年数を理由に自己判断で省略はできない
- 記録は安衛則38条により実施日から3年間保存し、未実施・記録不備は安衛法119条・120条の罰則対象になり得る
- 自社の作業者に必要な特別教育や時間数を確認したい場合は、特別教育 要否チェッカーで確認するところから始める