対象業務

粉じん作業の特別教育|対象作業と粉じん障害防止規則での位置づけ

運営・編集:安全教育台帳編集部

結論:特定粉じん作業の特別教育は「学科4.5時間・実技なし」、それとは別にじん肺法の教育義務もある

結論から言うと、粉じん障害防止規則で定める「特定粉じん作業」に労働者を就かせる場合は、労働安全衛生法第59条第3項労働安全衛生規則第36条第29号に基づき、粉じん障害防止規則第22条が定める特別教育を修了させなければなりません。時間数は粉じん作業特別教育規程(昭和54年7月23日労働省告示第68号)により学科4.5時間・実技なしと定められています。加えて、粉じん作業に従事する労働者に対しては、じん肺法第6条第1項により、この特別教育とは別に「じん肺に関する予防及び健康管理のために必要な教育」を行う義務も課されています。この二つの教育義務は対象範囲も根拠法も異なるため、混同すると実施漏れにつながります。対象業務の該当性や個別の適用関係は、所轄の労働基準監督署や労働安全コンサルタント等の専門家にご確認ください。

なぜ「学科4.5時間・実技なし」なのか(根拠条文と対象範囲)

事業者は、労働者を危険または有害な業務に就かせるときは、その業務に関する安全または衛生のための特別の教育を行わなければならないと定められています(労働安全衛生法第59条第3項)。粉じんに関しては、この委任を受けて労働安全衛生規則第36条第29号が「特定粉じん作業に係る業務」を特別教育の対象業務として掲げ、具体的な実施義務は粉じん障害防止規則第22条に定められています。同条は「事業者は、常時特定粉じん作業に係る業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、次の科目について特別の教育を行わなければならない」としたうえで、①粉じんの発散防止及び作業場の換気の方法、②作業場の管理、③呼吸用保護具の使用の方法、④粉じんに係る疾病及び健康管理、⑤関係法令の5科目を挙げています。

ここでいう「特定粉じん作業」は、粉じん障害防止規則の別表第一に列挙された「粉じん作業」(鉱物等の掘削・破砕、金属の研磨、岩石の裁断など)のうち、粉じん発生源が別表第二の「特定粉じん発生源」(屋内・坑内で固定した機械・設備を用いて粉じんを発生させる箇所など)に該当するものを指します。粉じん作業に従事していても、発生源が固定設備でなく可搬式の機械や手作業による場合などは、別表第二に該当せず特定粉じん作業とならないケースもあるため、自社の作業が該当するかどうかは条文と作業実態を突き合わせて確認する必要があります。

学科・実技の時間数は、粉じん障害防止規則第22条第2項に基づく粉じん作業特別教育規程(昭和54年労働省告示第68号)で定められています。5科目それぞれの時間は次のとおりです。

科目時間
粉じんの発散防止及び作業場の換気の方法1時間
作業場の管理1時間
呼吸用保護具の使用の方法30分
粉じんに係る疾病及び健康管理1時間
関係法令1時間
合計(学科のみ)4時間30分

粉じん作業特別教育には実技教育は定められておらず、学科4.5時間の修了が就業の要件です。これは他の特別教育と比べても学科・実技の構成が異なる例で、たとえばアーク溶接等の業務は学科11時間+実技10時間の合計21時間、フルハーネス型墜落制止用器具を用いる業務は学科4.5時間+実技1.5時間の合計6時間の教育が必要です。同じ「学科4.5時間」でも実技の有無で合計時間が変わるため、業務ごとに条文と時間数を確認することが欠かせません。自社の作業者にどの業務でどの特別教育が必要か、学科・実技それぞれ何時間かをまとめて確認したい方は、特別教育 要否チェッカーで従事業務を選ぶと、根拠となる号や時間数を確認できます。

じん肺法上の教育義務との違い

「じん肺 特別教育」という調べ方をされる方の多くは、粉じん障害防止規則の特別教育と、じん肺法上の教育義務を同じものと考えているケースがあります。じん肺法第6条第1項は、「労働安全衛生法及び鉱山保安法の規定によるほか」、常時粉じん作業に従事する労働者に対して、じん肺に関する予防及び健康管理のために必要な教育を行うことを事業者に義務付けています。この規定の対象は、別表第一に該当する「粉じん作業」全般であり、粉じん障害防止規則22条の特別教育の対象である「特定粉じん作業」(発生源が別表第二に該当するもの)より範囲が広くなります。一方で、じん肺法自体には特別教育規程のような学科・実技の時間数の定めは置かれておらず、内容・時間は事業者の判断に委ねられている点が、時間数が明確に定められた特別教育とは異なります。つまり、特定粉じん作業に就く労働者には両方の教育義務がかかり、特定粉じん作業に該当しない粉じん作業(別表第一のみに該当する作業)に就く労働者にはじん肺法上の教育義務のみがかかる、という整理になります。

自社で確認・対応する手順

粉じん作業に関する教育義務の抜け漏れを防ぐには、次の順番で点検すると整理しやすくなります。

  1. 粉じん作業の洗い出し:作業者ごとの業務内容を、粉じん障害防止規則別表第一の作業類型と照合し、粉じんにばく露するおそれのある業務に就いている作業者を特定します。
  2. 特定粉じん作業への該当性の確認:洗い出した業務のうち、粉じん発生源が別表第二の「特定粉じん発生源」に該当するかを確認します。該当する場合は特別教育(学科4.5時間)が必要です。判断に迷う場合は特別教育 要否チェッカーも参考になります。
  3. 特別教育の実施・記録:特定粉じん作業に該当する場合は、5科目・学科4.5時間の特別教育を実施し、受講者・科目・実施日等の記録を作成します。
  4. じん肺法上の教育の実施:特定粉じん作業に該当しない粉じん作業も含め、常時粉じん作業に従事する労働者全員に、じん肺の予防・健康管理に関する教育を行います。
  5. 記録の3年保存:特別教育の記録は、労働安全衛生規則第38条により3年間保存しなければなりません。日数に換算すると365×3=1,095日にわたって記録を維持する体制が必要になるため、実施した日から起算して長期間管理できる方法を検討します。

注意点・誤解しやすいポイント

第一に、「粉じん作業」と「特定粉じん作業」の取り違えです。すべての粉じん作業に特別教育が必要なわけではなく、特別教育の対象は発生源が固定設備である等、別表第二に該当する「特定粉じん作業」に限られます。ただし前述のとおり、特定粉じん作業に該当しない粉じん作業であっても、じん肺法上の教育義務は残る点に注意が必要です。

第二に、じん肺健康診断との混同です。じん肺法は教育義務(第6条)とは別に、常時粉じん作業に従事する労働者に対する定期的なじん肺健康診断も義務付けています。教育を実施していても健康診断が未実施であれば、それぞれ別の規定違反として扱われます。教育と健康診断は目的も条文も別であり、どちらか一方で足りるものではありません。

第三に、特別教育と技能講習・作業主任者の取り違えです。粉じん作業のうち、酸素欠乏危険場所や特定化学物質を伴う作業などが重なる場合は、別途、酸素欠乏危険作業特別教育や作業主任者の選任が必要になることもあります。粉じんの特別教育を実施したことで他の義務まで満たしていると誤解しないよう、作業実態ごとに該当する規定を個別に確認する必要があります。対象業務の該当性や複数の規定が重なる場合の取り扱いは、所轄の労働基準監督署や労働安全コンサルタント等の専門家にご確認ください。

作業者ごとにどの粉じん作業に就いているか、特別教育とじん肺法上の教育のどちらを実施済みかを把握するのは、対象者が増えるほどExcelや紙の台帳では負担が大きくなります。安全教育台帳では、作業者ごとの受講記録と労働安全衛生規則第38条が求める3年間の保存期間をクラウドで管理でき、14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)で試すことができます(/signup)。まとめに入る前に、特別教育 要否チェッカーで自社の作業者に必要な教育の抜け漏れがないか、実際に確認してみることをおすすめします。

まとめ

  • 特定粉じん作業に労働者を就かせる場合は、労働安全衛生法第59条第3項労働安全衛生規則第36条第29号・粉じん障害防止規則第22条に基づき、特別教育(学科4.5時間・実技なし)を修了させる必要があります。
  • 対象は「粉じん作業」全般ではなく、発生源が別表第二の「特定粉じん発生源」に該当する「特定粉じん作業」に限られます。
  • 特別教育とは別に、じん肺法第6条第1項により、常時粉じん作業に従事する労働者全員(特定粉じん作業に限らない)に対して、じん肺の予防・健康管理のための教育義務も課されています。
  • 特別教育の記録は労働安全衛生規則第38条により3年間保存する必要があります。
  • まずは自社の作業を粉じん障害防止規則の別表第一・別表第二と照合し、特別教育とじん肺法上の教育のどちらが必要かを整理することから始めるとよいでしょう。

よくある質問

Q. 粉じん作業に従事するすべての労働者に特別教育が必要ですか。

いいえ、粉じん障害防止規則第22条の特別教育が必要なのは、粉じん発生源が別表第二の「特定粉じん発生源」に該当する「特定粉じん作業」に就く労働者に限られます。それ以外の粉じん作業に就く労働者には、じん肺法第6条第1項に基づく、じん肺の予防・健康管理のための教育義務がかかります。自社の作業がどちらに該当するかは、所轄の労働基準監督署にご確認ください。

Q. 粉じん作業特別教育に実技教育はありますか。

粉じん作業特別教育規程(昭和54年労働省告示第68号)では、実技教育は定められておらず、学科教育4時間30分(5科目)のみが法定の要件です。他の特別教育(アーク溶接等やフルハーネス型墜落制止用器具など)には実技教育が含まれるものもあるため、業務ごとに時間数の構成が異なる点に注意が必要です。

Q. 特別教育の記録はどのくらいの期間保存すればよいですか。

労働安全衛生規則第38条により、特別教育を行ったときは、受講者・科目等を記録し、これを3年間保存しなければならないとされています。記録がなければ実施の事実を証明できず、労働基準監督署の臨検などで未実施と同様に扱われるおそれがあります。

Q. 特別教育を実施しないまま特定粉じん作業に就かせていた場合、どうなりますか。

特別教育を実施しないまま労働者を特定粉じん作業に就かせた場合、労働安全衛生法第119条第1号により、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となり得ます。記録を作成・保存していない場合は同法第120条の対象となる可能性もあります。未実施が判明した場合は、当該業務への就業を一時的に控えさせたうえで速やかに教育を実施し、所轄の労働基準監督署に相談することをおすすめします。

Q. じん肺法上の教育とじん肺健康診断は同じものですか。

異なります。じん肺法第6条の教育は、粉じんに関する予防・健康管理の知識を伝えるものです。一方、じん肺健康診断は、じん肺法第3章に基づき常時粉じん作業に従事する労働者等に対して定期的に実施する健康診断で、教育とは別の義務です。両方を実施して初めて、じん肺法上の義務を満たしたことになります。

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