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高所作業車の特別教育と技能講習の違い|作業床の高さで変わる必要な資格

運営・編集:安全教育台帳編集部

高所作業車を使う作業に、どの資格が必要なのか迷っていませんか

「高所作業車を使わせたいが、特別教育で足りるのか、それとも技能講習を受けさせないといけないのか」「学科・実技は何時間必要なのか」。製造・建設・物流・ビルメンテナンスの現場でよく聞かれる質問です。高所作業車(作業床を上下させて作業者を高所に移動させる車両。バケット車・スカイマスターなどとも呼ばれます)は、機種や現場によって作業床の高さが大きく異なるため、同じ「高所作業車の運転」でも必要な資格が特別教育と技能講習に分かれる点が判断を難しくしています。この記事では、境界となる基準と、それぞれの学科・実技の時間数、記録の残し方までを根拠条文とあわせて整理します。

結論:作業床の高さ10m未満は特別教育、10m以上は技能講習

結論から言うと、高所作業車の運転に必要な資格は、作業床を最大まで上げたときの高さで決まります。作業床の高さが10m未満の高所作業車の運転は、労働安全衛生規則第36条第10号の5に基づく特別教育(危険・有害業務に就かせる前に事業者が行う法定の教育)の対象で、安全衛生特別教育規程により学科6時間+実技3時間の合計9時間です。

一方、作業床の高さが10m以上の高所作業車の運転(道路上を走行させる運転を除きます)は、特別教育では対応できない「就業制限業務」にあたり、労働安全衛生法施行令第20条第15号に基づき、高所作業車運転技能講習を修了した者でなければ就かせられません。技能講習は特別教育よりも学科・実技とも長く、免除がない基本コースで学科11時間+実技6時間の合計17時間です(高所作業車運転技能講習規程・平成2年労働省告示第67号)。対象車両の該当性や実技の一部省略規定の適用など個別の判断は、所轄の労働基準監督署や登録教習機関・労働安全コンサルタント等の専門家にご確認ください。

対象業務の範囲と法的根拠

根拠条文:安衛法59条3項・安衛則36条10号の5

特別教育を行う義務そのものは、労働安全衛生法第59条第3項に定められています。事業者は「危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるとき」に、その業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行わなければなりません。

この「厚生労働省令で定めるもの」の一覧が労働安全衛生規則第36条で、高所作業車の運転は同条第10号の5に「作業床の高さ(作業床を最も高く上昇させた場合における床面の高さをいう。)が十メートル未満の高所作業車の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務」として定められています。

10m以上は就業制限業務、技能講習の修了が必要

作業床の高さが10m以上の高所作業車の運転になると、特別教育ではなく「就業制限業務」の扱いに切り替わります。事業者は、政令で定める業務については免許を受けた者か技能講習を修了した者などでなければ就かせてはならないと定められており(労働安全衛生法第61条)、高所作業車の運転(道路上を走行させる運転を除く)のうち作業床の高さが10m以上のものは、労働安全衛生法施行令第20条第15号で就業制限業務として指定されています。この技能講習は都道府県労働局長の登録を受けた教習機関(登録教習機関)が実施し、修了者に技能講習修了証を交付します(労働安全衛生法第76条)。

なお、道路上を走行させるだけの運転(作業床を操作しない移動)はこの就業制限・特別教育のいずれの対象からも除かれており、別途、車両の種類に応じた運転免許(普通・大型など)が必要になります。

学科・実技の時間数(特別教育/技能講習)

具体的な科目と時間は、特別教育については安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)、技能講習については高所作業車運転技能講習規程(平成2年労働省告示第67号)に定められています。2026年時点の規定では、それぞれ下表のとおりです。

区分対象の作業床の高さ学科実技合計
特別教育(安衛則36条10号の5)10m未満6時間3時間9時間
技能講習(施行令20条15号・免除なしの基本コース)10m以上11時間6時間17時間

技能講習の学科11時間の内訳は、作業に関する装置の構造・取扱いの方法に関する知識5時間、原動機に関する知識3時間、運転に必要な一般的事項に関する知識2時間、関係法令1時間で、実技6時間は作業のための装置の操作にあてられます。他の資格・講習の修了状況によっては一部科目が免除され、実際の受講時間が短くなる場合があります。

高所作業車の特別教育(学科6時間+実技3時間=計9時間)は、本サイトの特別教育の要否チェッカーに収録している他業務と比べると中程度の水準です。例えば低圧電気取扱いは学科7時間+実技7時間で計14時間、アーク溶接は学科11時間+実技10時間で計21時間、フルハーネス型墜落制止用器具の使用は学科4.5時間+実技1.5時間で計6時間、玉掛け(つり上げ荷重1t未満)は学科5時間+実技4時間で計9時間です。教育時間は1人あたりの時間数のため、これから10m未満の高所作業車に配置する作業者が4人いる場合、1人あたり9時間の教育は4人分では 9×4=36 で合計36時間になります。社内で対応するか、登録教習機関にまとめて委託するかを検討する目安になります。

自社で確認・対応する手順

  1. 保有車両の作業床の高さを確認する:カタログや車検証、メーカーの仕様書で「作業床を最も高く上昇させた場合の高さ」を確認します。10mちょうど付近の機種は、境界の該当性を誤りやすいため特に注意が必要です。
  2. 必要な資格を業務ごとに仕分ける:10m未満のみを扱う作業者には特別教育、10m以上を扱う可能性がある作業者には技能講習の修了が必要になることを整理します。同じ作業者が両方の車両を扱う可能性がある場合は、上位資格である技能講習の修了で足ります。
  3. 未受講者の特定:対象業務に従事する(または今後従事させる予定の)作業者のうち、必要な特別教育または技能講習を修了していない人を洗い出します。
  4. 教育・講習の実施:特別教育は自社実施(または委託)、技能講習は登録教習機関での受講が必要です。自社で特別教育を実施する場合は、上表の科目・時間を満たしているか確認します。
  5. 記録の作成・保存:特別教育を行ったときは、受講者名・科目・時間数・実施日・指導者などを記録し、労働安全衛生規則第38条に基づき実施日から3年間保存します。技能講習修了者についても、修了証の写しなど資格を確認できる記録を併せて管理しておくと、元請の安全書類や監督署の立入時にも対応しやすくなります。

注意点・誤解しやすいポイント

特別教育と技能講習の取り違え:どちらも「高所作業車の運転」という同じ言葉が使われるため、10m未満の特別教育を受けさせただけで10m以上の車両を運転させてしまう誤りが起こりがちです。作業床の高さは車両ごとに固定の仕様であるため、配置転換や新規導入の際は必ず対象車両の作業床の高さを確認してから、必要な資格を判断してください。

保存期間は更新期限ではない:特別教育の記録に関する安衛則第38条の3年保存は、記録を最低限いつまで残すかという保存義務の下限です。特別教育にも技能講習にも法定の定期的な再教育(更新)義務はなく、3年が経過したからといって受け直しが必要になるわけではありません。

道路上の走行は別制度:作業床を操作せず道路上を走行させるだけの運転は、この特別教育・技能講習のいずれの対象からも除かれています。公道を走行する場合は、車両の区分に応じた道路交通法上の運転免許が別途必要になる点も併せて確認してください。

実技の一部省略規定:他の資格や実務経験の状況によって、技能講習の実技の一部が省略される場合があります。省略規定の適用可否は作業者ごとの資格・経歴によって異なるため、自己判断で省略せず、所轄の労働基準監督署や登録教習機関にご確認ください。

作業者ごとにどの車両を運転できるか、必要な特別教育・技能講習を受けているかを紙やExcelで管理していると、車両の作業床の高さと受講状況の突合が漏れがちです。無料トライアル(14日間・クレジットカード不要)では、作業者の受講記録・修了証をクラウド上で一元管理できるため、関心があれば/signupから試すことができます。

まずは自社の高所作業車について必要な特別教育を確認したい場合は、特別教育の要否チェッカーで対象業務を選択すると、学科・実技の時間数と根拠となる号番号がまとめて表示されます。

まとめ

  • 高所作業車の運転は、作業床の高さ10m未満なら安衛則第36条第10号の5に基づく特別教育(学科6時間+実技3時間=計9時間)、10m以上なら施行令第20条第15号に基づく技能講習(免除なしの基本コースで学科11時間+実技6時間=計17時間)が必要です。
  • 道路上を走行させるだけの運転はこの制度の対象外で、別途、道路交通法上の運転免許が必要です。
  • 未実施は安衛法第59条第3項(特別教育)または第61条(就業制限業務)の義務違反にあたり、安衛法第119条により50万円以下の罰金の対象となり得ます。
  • 特別教育を行ったら、受講者・科目・実施日等を記録し、安衛則第38条に基づき3年間保存する必要があります。
  • 自社の車両にどちらの資格が必要か迷ったら、まずは特別教育の要否チェッカーで対象業務と時間数を確認することから始めるとよいでしょう。

よくある質問

Q. 作業床の高さがちょうど10mの高所作業車は、特別教育と技能講習のどちらが必要ですか。

条文上、特別教育の対象は「作業床の高さが十メートル未満」の高所作業車です(安衛則第36条第10号の5)。したがって、ちょうど10mの車両は特別教育の対象からは外れ、技能講習が必要な10m以上の側に含まれます。境界付近の機種は、メーカーの仕様書で作業床を最も高く上昇させた場合の高さを正確に確認することをおすすめします。

Q. 10m以上の高所作業車運転技能講習を修了していれば、10m未満の特別教育は別途不要ですか。

はい。技能講習は特別教育の対象範囲を包含する上位の資格にあたるため、高所作業車運転技能講習を修了していれば、作業床の高さ10m未満の高所作業車の運転にも重ねて特別教育を受ける必要はありません。

Q. 高所作業車運転技能講習の時間は、必ず学科11時間・実技6時間ですか。

免除がない基本コースでは学科11時間+実技6時間の合計17時間です(高所作業車運転技能講習規程・平成2年労働省告示第67号)。他の資格の取得状況などに応じて一部科目が免除され、実際の受講時間が短くなる場合があるため、正確な時間は登録教習機関に確認してください。

Q. 道路上を走行させるだけであれば、特別教育も技能講習も不要ですか。

作業床を操作せず道路上を走行させるだけの運転は、安衛則第36条第10号の5施行令第20条第15号のいずれの対象からも除かれています。ただし、公道を走行する以上、車両の区分に応じた道路交通法上の運転免許は別途必要です。作業現場内での移動と公道走行とでは適用される制度が異なるため、判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署にご確認ください。

Q. 特別教育・技能講習を実施せずに作業させると、罰則はありますか。

労働安全衛生法第59条第3項(特別教育)または第61条(就業制限業務)の義務に違反した場合、同法第119条により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となり得ます。特別教育の記録の作成・保存を怠った場合も同法第120条により50万円以下の罰金の対象となり得ます。

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