教育の実施

特別教育の費用と受講時間の賃金は誰が負担する?社内実施と外部委託の比較

運営・編集:安全教育台帳編集部

結論:費用は事業者負担、受講時間も労働時間として扱うのが原則

「特別教育(危険・有害業務に就かせる前に事業者が行う法定の教育)の受講料は誰が払うのか」「受講している間の給料は出るのか」——現場から安全衛生担当者にこう聞かれて、即答できずに困った経験はないでしょうか。

結論から言うと、2026年時点の規定では、特別教育の実施に関する費用(社内実施の教材・講師費用、社外委託の場合の受講料・旅費など)は事業者が負担し、受講時間は原則として労働時間として扱います。これは厚生労働省の通達「労働安全衛生法及び労働安全衛生法施行令の施行について」(昭和47年9月18日付け基発第602号)に明記されている行政解釈です。同通達は、労働安全衛生法第59条・第60条の安全衛生教育について「事業者の責任において実施されなければならないものであり」「安全衛生教育については所定労働時間内に行なうのを原則とすること。また、安全衛生教育の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該教育が法定時間外に行なわれた場合には、当然割増賃金が支払われなければならない」「企業外で行なう場合の講習会費、講習旅費等についても、この法律に基づいて行なうものについては、事業者が負担すべきものであること」としています。つまり「受講料は本人負担」「勤務時間外だから無給」という運用は、いずれも通達の考え方と食い違います。対象業務の該当性や個別の費用負担の取り扱いは、所轄の労働基準監督署や労働安全コンサルタント等の専門家にご確認ください。

なぜ会社負担・労働時間扱いになるのか(根拠条文と時間数)

特別教育は、労働者を危険・有害業務に就かせる前に、その業務に必要な安全・衛生の知識・技能を習得させるための法定教育です(労働安全衛生法第59条第3項)。対象となる業務は労働安全衛生規則第36条に列挙されており、フォークリフトの運転、アーク溶接、低圧電気取扱い、玉掛けなど多岐にわたります(職場のあんぜんサイト「特別教育」)。

この教育は労働者個人の資格取得ではなく、事業者が法令上の義務として実施するものです。だからこそ基発602号は「事業者の責任において実施されなければならない」教育として、費用負担と労働時間の扱いを整理しています。具体的な学科・実技の時間数は業務ごとに安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)で定められており、代表的な業務では次のとおりです。

業務(安衛則36条の号)学科実技合計
アーク溶接等の業務(第3号)11時間10時間21時間
電気取扱い・低圧(第4号)7時間7時間14時間
フォークリフト・1t未満(第5号)6時間6時間12時間
高所作業車・作業床10m未満(第10号の5)6時間3時間9時間
玉掛け・1t未満(第19号)5時間4時間9時間
フルハーネス型墜落制止用器具(第41号)4.5時間1.5時間6時間

たとえばアーク溶接の特別教育は学科11時間+実技10時間=計21時間で、通常は複数日に分けて実施します。この21時間をすべて所定労働時間内に組めば通常賃金の範囲で完結しますが、現場の稼働を止められず就業時間後に実施すると、その時間分は法定時間外労働として割増賃金の支払いが必要になります。逆に低圧電気取扱い(学科7時間+実技7時間=計14時間)のように比較的短い業務でも、考え方は同じです。

対象人数が複数になる場合は、1人あたりの時間数に人数を掛けて総所要時間を見積もると、外部委託の見積もりや社内実施のシフト調整がしやすくなります。たとえば低圧電気取扱いの特別教育(1人あたり計14時間)を作業者3人に実施する場合、14×3=42時間分の教育時間を確保する必要があり、これを就業時間内でどう配分するかが実施計画の出発点になります。自社の作業者にどの特別教育が必要で、学科・実技が何時間になるかを確認したい場合は、特別教育 要否チェッカーで従事業務を選ぶだけで確認できます。

社内実施と外部委託、費用負担はどう変わるか

社内実施と外部委託(登録教習機関などへの委託)では、事業者が負担する費用の中身が変わります。

社内実施の場合は、教材費・会場費・自社の有資格者や外部講師への謝金などが費用の中心になり、金銭的な支出は比較的抑えられますが、学科・実技を法令の要件どおりに実施できる講師・設備の確保と、修了証・記録の作成を自社で行う手間がかかります。

外部委託の場合は、基発602号が明記するとおり「講習会費、講習旅費等」を事業者が負担します。受講料に加えて、会場までの交通費や、勤務地から離れた会場で実施する場合の移動時間の扱い(移動時間も業務の指示に基づくものであれば労働時間に該当し得ます)まで含めて、あらかじめ費用と時間の見積もりをしておくと後のトラブルを避けやすくなります。

いずれの場合も、受講時間そのものを労働時間として扱う原則は変わりません。社内・外部のどちらを選ぶかは、対象人数・頻度・自社に有資格者がいるかどうかで判断するのが実務的です。

自社で確認・対応する手順

特別教育の費用と受講時間の扱いについて、自社の対応を整理する際は次の順序で確認します。

  1. 従事させる業務が安衛則36条の対象か確認する:予定している業務が対象業務に該当するかを確認します。該当しなければ特別教育自体が不要です。
  2. 学科・実技の時間数を確認し、実施方法(社内/外部委託)を決める:安全衛生特別教育規程で定められた時間数をもとに、自社講師で対応できるか、外部委託が必要かを判断します。
  3. 所定労働時間内に実施できるよう日程を組む:基発602号の原則どおり、まずは所定労働時間内での実施を検討します。やむを得ず時間外になる場合は、割増賃金の支払いを前提にスケジュールを組みます。
  4. 費用の負担先を就業規則・労使間で明確にしておく:受講料・教材費・旅費が事業者負担であることを社内規程やマニュアルに明記しておくと、担当者が変わっても運用がぶれません。
  5. 記録を作成し3年間保存する:受講者・科目・実施年月日などを記録し、労働安全衛生規則第38条に基づき実施日から3年間保存します。

この一連の流れのうち、受講者ごとの特別教育の実施記録・修了証・3年間の保存管理は、対象人数が増えるほどExcel台帳や紙の管理では抜け漏れが起きやすい部分です。14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)では、作業者ごとの受講記録や保有資格をまとめてクラウドで管理でき、サインアップからすぐに試すことができます。

注意点・誤解しやすいポイント

「受講料は本人負担でよい」という誤解:特別教育は事業者に課された法定義務であり、労働者個人の資格取得とは性質が異なります。基発602号は「企業外で行なう場合の講習会費、講習旅費等」も事業者負担とする考え方を示しており、本人負担とする運用は通達の趣旨に反します。

「就業時間外だから無給でよい」という誤解:特別教育の受講時間は労働時間と解されるため、法定時間外に実施すれば割増賃金の支払いが必要です。「教育だから残業代の対象外」という扱いは誤りです。

特別教育と技能講習・免許の取り違え:特別教育は比較的軽微な危険・有害業務が対象ですが、つり上げ荷重が一定以上の玉掛けや、機体重量・作業床の高さが一定以上の建設機械などでは、技能講習や免許(就業制限業務)が必要になり、特別教育だけでは就業させられません。対象業務の規模を都度確認する必要があります。

保存期間と再教育義務の混同:特別教育そのものに、法令上の定期的な再教育(更新)義務はありません。一方、受講記録は労働安全衛生規則第38条により実施日から3年間の保存義務があり、この2つを混同しないことが重要です。

よくある質問

Q. 特別教育の受講料は会社が負担しなければなりませんか。

2026年時点の規定では、基発第602号(昭和47年9月18日)により、特別教育を企業外の教育機関に委託する場合の講習会費・講習旅費等を含め、法令に基づいて実施する特別教育の費用は事業者が負担すべきものとされています。

Q. 特別教育を就業時間後に実施した場合、賃金は発生しますか。

発生します。基発第602号は、安全衛生教育の実施に要する時間は労働時間と解されるとしており、法定時間外に実施した場合は割増賃金の支払いが必要です。まずは所定労働時間内での実施を検討し、やむを得ず時間外になる場合は割増賃金を前提にスケジュールを組む必要があります。

Q. 社内実施と外部委託、どちらを選べばよいですか。

対象人数や頻度、自社に対応できる有資格者や設備があるかによって判断が分かれます。対象人数が多い・頻度が高い場合は社内実施のほうが費用を抑えやすく、対象業務が専門的・少人数の場合は外部委託のほうが確実に法定要件を満たしやすい傾向があります。いずれの場合も、費用は事業者負担、受講時間は労働時間として扱う原則は変わりません。

Q. 特別教育の受講中にケガをした場合、労災の対象になりますか。

特別教育は事業者の指揮命令のもとで実施される業務の一環であるため、一般的には業務遂行性が認められ、労災保険の対象になり得ると考えられます。ただし個別の状況によって判断が異なるため、実際の適用については所轄の労働基準監督署にご確認ください。

Q. 特別教育の記録は何年保存する必要がありますか。

労働安全衛生規則第38条により、受講者・科目・実施年月日などの記録を作成し、実施日から3年間保存する義務があります。特別教育自体に更新義務はありませんが、記録の保存義務は別途発生する点に注意が必要です。

まとめ

  • 特別教育の費用(社内実施の教材・講師費用、外部委託の受講料・旅費等)は、基発第602号により事業者が負担するのが原則
  • 受講時間は労働時間として扱い、所定労働時間内での実施が原則、法定時間外に実施した場合は割増賃金の支払いが必要
  • 社内実施と外部委託は、対象人数・頻度・自社の対応力で選ぶのが実務的で、いずれも費用負担・労働時間の扱いは変わらない
  • 「受講料は本人負担」「時間外は無給」という運用は通達の考え方に反するため、就業規則や運用マニュアルで負担先を明確にしておく
  • 自社の作業者に必要な特別教育を確認したい場合は、特別教育 要否チェッカーから始め、受講記録や保有資格の管理を効率化したい場合は無料トライアルの活用を検討するとよい

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