学科・実技の時間

高圧・特別高圧電気取扱いの特別教育|低圧との違いと対象作業

運営・編集:安全教育台帳編集部

「高圧電気取扱いの特別教育」、低圧とは何が違うのか迷っていませんか

キュービクルの点検や高圧受電設備の工事を外部業者に任せず自社作業者に担わせようとしたとき、「低圧の電気取扱いは受講済みだが、高圧・特別高圧も同じ扱いでよいのか」「学科・実技は何時間必要か」「記録はどう残せば監督署対応や元請の安全書類に足りるのか」と迷う担当者は少なくありません。この記事では、根拠条文を示しながら、高圧・特別高圧電気取扱いの特別教育(危険・有害業務に就かせる前に事業者が行う法定の教育)が低圧とどう違うのか、対象業務・時間数・記録の実務を順番に整理します。

結論から言うと、低圧とは別区分・別時間数の特別教育が必要

結論から言うと、高圧・特別高圧の充電電路等の敷設・点検・修理・操作等の業務は、低圧の電気取扱業務とは労働安全衛生規則(安衛則)36条4号の中でも区別された対象業務であり、低圧とは学科・実技とも異なる時間数の特別教育が必要です。低圧の特別教育を修了していても、それだけで高圧・特別高圧の業務に就かせることはできません。

  • 高圧・特別高圧の充電電路等の業務:学科11時間+実技15時間以上=計26時間以上(活線作業・活線近接作業を行う場合)
  • 低圧の充電電路等の業務:学科7時間+実技7時間以上=計14時間以上(活線作業・活線近接作業を行う場合)

高圧・特別高圧は低圧よりも学科・実技とも長く設定されており、これは感電時の危険性が電圧に応じて高くなることを反映したものです。両方の業務に就く作業者には、それぞれの特別教育を修了させる必要があります。

なぜ時間が違うのか——根拠条文と法定時間

対象業務の定義(安衛則36条4号)

安衛則36条は、事業者が労働者を就かせる前に特別教育を行うべき危険・有害業務を号ごとに列挙しており、電気取扱業務は4号に定められています(e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。4号は「高圧(直流にあつては七百五十ボルトを、交流にあつては六百ボルトを超え、七千ボルト以下である電圧をいう。)若しくは特別高圧(七千ボルトを超える電圧をいう。)の充電電路若しくは当該充電電路の支持物の敷設、点検、修理若しくは操作の業務」または「低圧(直流にあつては七百五十ボルト以下、交流にあつては六百ボルト以下である電圧をいう。)の充電電路の敷設若しくは修理の業務」等を対象としています。特別教育の実施義務そのものは、安衛法59条3項が根拠です。

学科・実技の時間(安全衛生特別教育規程)

学科・実技の具体的な科目と時間は、法律・規則本体ではなく「安全衛生特別教育規程」(昭和47年労働省告示第92号)が定めています。高圧・特別高圧は規程5条、低圧は規程6条が根拠です。

区分根拠条学科時間実技時間合計(活線・活線近接作業)実技の下限(操作業務のみ)
高圧・特別高圧の電気取扱い規程5条11時間15時間以上26時間以上充電電路の操作のみ=1時間以上
低圧の電気取扱い規程6条7時間7時間以上14時間以上開閉器の操作のみ=1時間以上

学科の内訳を見ると、高圧・特別高圧は「電気に関する基礎知識」「電気設備に関する基礎知識」「安全作業用具に関する基礎知識」「活線作業及び活線近接作業の方法」「関係法令」の5科目で計11時間、低圧は同種の5科目で計7時間です。実技は活線作業・活線近接作業を行う場合は高圧・特別高圧で15時間以上、低圧で7時間以上が必要ですが、充電電路(低圧では開閉器)の操作のみを行う作業者に限っては、実技を1時間以上に短縮できる規定があります。

例えば、高圧受電設備の点検で活線近接作業まで行う作業者が3人いる現場であれば、1人あたり学科11時間+実技15時間=計26時間が必要なので、26×3=78(人時間)の教育時間を確保する必要があります。低圧のみを扱う作業者2人であれば、14×2=28(人時間)です。区分を取り違えて低圧の時間数(計14時間)だけで高圧・特別高圧の作業者に教育を済ませてしまうと、法定の特別教育を修了したことにはなりません。

自社の作業者に高圧・特別高圧と低圧のどちらの特別教育が必要か確認したい場合は、特別教育 要否チェッカーで従事業務を選ぶと、該当する号・学科実技の時間・根拠を一覧で確認できます。

記録の作成・3年保存——ここを軽く見ると監督署対応で困る

特別教育を実施したら終わりではありません。安衛則38条は「事業者は、特別教育を行なつたときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを三年間保存しておかなければならない」と定めています(e-Gov法令検索 労働安全衛生規則)。保存すべき記録には、受講者の氏名、実施した科目(高圧・特別高圧か低圧かの区分を含む)、実施日といった項目が含まれます。法令上の様式は定められていませんが、後から「誰が・いつ・高圧と低圧のどちらを受講したか」を第三者に説明できる形にしておく必要があります。

自社で確認・対応する手順

  1. 作業内容を棚卸しする:電気取扱業務に関わる作業者ごとに「高圧・特別高圧の充電電路等に触れるか」「低圧のみか」「活線近接作業まで行うか、操作のみか」を洗い出します。
  2. 未受講者・区分違いを特定する:現に該当業務に就いている作業者の中で、必要な区分(高圧・特別高圧か低圧か)の特別教育を修了していない人、または低圧のみ受講していて高圧・特別高圧の業務にも就いている人がいないかを確認します。
  3. 教育を実施する:登録教習機関の利用でも自社実施でも構いませんが、規程5条・6条が定める科目と時間を満たす必要があります。
  4. 記録を作成し3年間保存する:受講者・区分(高圧・特別高圧/低圧)・科目・実施日を記載した記録を安衛則38条に沿って作成し、3年間保存します。
  5. 配置転換のたびに棚卸しを繰り返す:キュービクルの新設や設備更新、担当替えのたびに、高圧・特別高圧の業務に新たに就く作業者が増えていないかを確認します。

高圧・特別高圧と低圧の受講記録、3年保存の管理を紙の名簿で続けると、誰がどちらの区分をいつ受講したか、あと何年保存すればよいかの把握が煩雑になりがちです。14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)で、作業者ごとの受講記録と保存期間をクラウドで管理できますので、無料トライアルに申し込むのも一つの方法です。

まとめる前に、実際に自社の作業者がどの区分に該当するかを特別教育 要否チェッカーで確認しておくと、教育計画の見直しがスムーズです。

注意点・誤解しやすいポイント

  • 技能講習・免許との混同:高圧・特別高圧の電気取扱いは特別教育(安衛法59条3項)であり、就業制限のかかる技能講習・免許(安衛法61条・施行令20条)とは制度が異なります。電気工事士など別の資格が必要な作業もありますが、それと特別教育の要否は別問題として確認する必要があります。
  • 低圧の受講で高圧・特別高圧もカバーできるという誤解:低圧の特別教育(規程6条・計14時間以上)を修了していても、高圧・特別高圧の業務(規程5条・計26時間以上)に就かせることはできません。区分ごとに別の教育が必要です。
  • 実技の省略規定の誤適用:充電電路(低圧では開閉器)の操作のみを行う場合は実技を1時間以上に短縮できますが、これは操作業務のみに限った規定です。活線作業や活線近接作業を行う可能性がある作業者に安易に適用すると、教育未修了とみなされるリスクがあります。
  • 対象業務の該当性や実技の省略規定の適用など個別の取り扱いは、所轄の労働基準監督署や登録教習機関、労働安全コンサルタント等の専門家にご確認ください。

よくある質問

Q. 低圧の電気取扱い特別教育をすでに受講していれば、高圧・特別高圧の業務にも就けますか

就けません。高圧・特別高圧の電気取扱い(安全衛生特別教育規程5条・学科11時間実技15時間以上)と低圧の電気取扱い(規程6条・学科7時間実技7時間以上)は対象業務も科目・時間も別に定められているため、高圧・特別高圧の業務に就く作業者は、低圧とは別にその特別教育を修了する必要があります。

Q. 高圧の充電電路の操作だけを行う作業者も、実技15時間が必要ですか

2026年時点の規定では、充電電路の操作の業務のみを行う作業者については、実技教育を1時間以上とすることができます。活線作業・活線近接作業まで行う場合は15時間以上が必要になるため、担当する作業の範囲によって必要な実技時間が変わる点に注意が必要です。

Q. 高圧・特別高圧電気取扱いの特別教育に有効期限はありますか

2026年時点の規定では、高圧・特別高圧電気取扱いの特別教育そのものに更新(再教育)の義務はありません。期限があるのは教育の記録の保存期間で、安衛則38条により受講者・科目等の記録を3年間保存する必要があります。

Q. 特別教育を実施しなかった場合、罰則はありますか

特別教育(安衛法59条3項)を行わなかった場合は、安衛法119条により6か月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象となり得ます(e-Gov法令検索 労働安全衛生法)。記録の作成・保存(安衛則38条)を怠った場合も罰則の対象となり得るほか、法人と行為者の双方が罰せられる両罰規定(安衛法122条)が適用される可能性があります。

Q. 電気工事士の資格があれば、高圧・特別高圧の特別教育は不要ですか

電気工事士の資格と、労働安全衛生法上の特別教育は別の制度であり、資格があるからといって特別教育が自動的に不要になるわけではありません。特別教育の対象業務に該当する作業に労働者を就かせる場合は、資格の有無にかかわらず特別教育の実施が必要かどうかを個別に確認する必要があります。詳しくは所轄の労働基準監督署や登録教習機関、労働安全コンサルタント等にご確認ください。

まとめ

  • 高圧・特別高圧の電気取扱い(規程5条・学科11時間実技15時間以上=計26時間以上)と低圧の電気取扱い(規程6条・学科7時間実技7時間以上=計14時間以上)は、対象業務も法定時間も別に定められている
  • 低圧の特別教育を修了していても、高圧・特別高圧の業務に就かせることはできない
  • 充電電路(低圧は開閉器)の操作のみを行う作業者は実技を1時間以上に短縮できるが、活線作業・活線近接作業を行う場合は本来の時間数が必要
  • 受講者・区分・科目・実施日等の記録は安衛則38条により3年間保存する義務がある
  • まずは特別教育 要否チェッカーで自社の作業者がどの区分に該当するかを確認し、記録の管理体制を整えることから始めましょう

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