学科・実技の時間

アーク溶接の特別教育|学科11時間+実技10時間の内容と対象業務

運営・編集:安全教育台帳編集部

結論:アーク溶接等の特別教育は「学科11時間+実技10時間(合計21時間)」

結論から言うと、アーク溶接機を用いてアークを発生させる金属の溶接・溶断・加熱の業務(労働安全衛生規則第36条第3号)に労働者を就かせる場合は、安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)第5条に基づき、学科11時間+実技10時間の合計21時間の特別教育を修了させなければなりません。溶接技能を身につけているかどうかや、経験年数の長さは関係なく、この業務に初めて就かせる前に必ず修了させる必要があります。対象業務の該当性や実技の一部省略規定の適用など個別の判断は、所轄の労働基準監督署や労働安全コンサルタント等の専門家にご確認ください。

なぜ「学科11時間+実技10時間」なのか(根拠条文と科目の内訳)

特別教育とは、危険または有害な業務に労働者を就かせる前に、事業者が業務ごとに定められた学科・実技の教育を修了させなければならないという法定の義務です(労働安全衛生法第59条第3項)。対象となる危険有害業務は労働安全衛生規則第36条に約49の号として列挙されており、アーク溶接等の業務は第3号に「アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等の業務」として定められています。

アーク溶接等の特別教育の学科・実技の時間は、安全衛生特別教育規程第5条で次のとおり定められています。学科教育は合計11時間で、「アーク溶接に関する知識」「アーク溶接装置に関する基礎知識」「アーク溶接等の作業の方法に関する知識」「関係法令」といった科目で構成されます。実技教育は「アーク溶接装置の取扱い及びアーク溶接等の作業の方法」について10時間以上行うものとされています。学科・実技のいずれも省略せず、定められた時間数を満たしてはじめて修了となります。

他の特別教育の業務と比べると、アーク溶接等の時間数がどの位置づけかがわかりやすくなります。

業務(安衛則36条の号)学科実技合計
アーク溶接等(第3号)11時間10時間21時間
電気取扱い・高圧/特別高圧(第4号)11時間15時間26時間
電気取扱い・低圧(第4号)7時間7時間14時間
フルハーネス型墜落制止用器具(第41号)4.5時間1.5時間6時間
玉掛け(つり上げ荷重1t未満・第16号)5時間4時間9時間
高所作業車(作業床の高さ10m未満・第10号の5)6時間3時間9時間

こうして並べると、アーク溶接等の合計21時間は、電気取扱い(低圧)の14時間より長く、電気取扱い(高圧・特別高圧)の26時間よりは短い、比較的重い部類の特別教育であることがわかります。溶接作業はアーク光による目・皮膚障害や感電、ヒュームによる健康障害など複数のリスクを伴うため、学科・実技ともに他の多くの業務より手厚い時間数が定められていると考えられます。

教育時間は1人あたりの時間数であるため、対象人数が増えるほど総研修時間も大きくなります。例えば、これからアーク溶接の業務に配置する作業者が4人いる場合、1人あたりの教育時間(学科11時間+実技10時間=21時間)は、4人分では 21×4=84 で合計84時間にのぼります。社内で講師を確保して実施するか、登録教習機関にまとめて委託するかを検討するうえでの目安になります。自社の作業者がどの特別教育の対象になるかを確認したい場合は、特別教育 要否チェッカーで従事業務を選ぶだけで必要な教育と時間数を確認できます。

自社で確認・対応する手順

アーク溶接等の特別教育を漏れなく実施するには、次の順序で確認・対応を進めます。

  1. 対象業務への該当性を確認する:被覆アーク溶接、炭酸ガスアーク溶接、TIG溶接など、アーク溶接機を用いて金属の溶接・溶断・加熱を行わせる作業に労働者を就かせているかを洗い出します。ガス溶接など別の方式の場合は、別の特別教育(ガス溶接技能講習等)の対象になるため区別が必要です。
  2. 未修了の作業者を洗い出す:溶接の実務経験があっても、この特別教育を修了していなければ業務に就かせることはできません。新規入場者や配置転換の際に特に確認漏れが起きやすい場面です。
  3. 登録教習機関等での受講、または社内での実施を手配する:学科11時間・実技10時間の科目・時間を満たすカリキュラムであることを確認します。
  4. 記録を作成し3年間保存する:受講者・科目・時間数・実施年月日・指導者などを記録し、労働安全衛生規則第38条に基づき実施日から3年間保存します。元請の安全書類や監督署の立入時に提示を求められることがあります。

このうち作業者ごとの受講記録と3年保存の管理は、担当者が交代したりExcel台帳が増えたりするうちに抜け漏れが起きやすい部分です。14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)では、作業者ごとの受講記録・修了証・保存期間をクラウドで一元管理でき、サインアップからすぐに試すことができます。

注意点・誤解しやすいポイント

アーク溶接等の特別教育では、次のような勘違いが起きがちです。

技能講習・免許との取り違え:アーク溶接等の業務そのものは特別教育(安衛則36条第3号)の対象であり、技能講習や免許のような就業制限業務ではありません。一方で、ガス溶接・溶断等の業務は別区分でガス溶接技能講習の修了が必要になるなど、溶接に関連する資格・教育は方式によって枠組みが異なるため、混同しないよう注意が必要です。

経験年数による省略の誤解:長年アーク溶接の実務経験があっても、法定の特別教育を修了していなければ業務に就かせることはできません。実技教育の一部が省略できる場合があるのは、他の特別教育を修了している者や当該業務に関し十分な知識・技能を有すると認められる者など、規程上の要件に該当する場合に限られるため、自己判断で省略しないことが重要です。

保存期間の誤解:特別教育は業務ごとに一度修了すればよく、法定の定期的な再教育(更新)義務はありません。一方で記録は労働安全衛生規則第38条により実施日から3年間の保存義務があり、この2つを混同しないことが重要です。

罰則:特別教育を実施しないまま労働者を就業させた場合は労働安全衛生法第119条により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となり得ます。記録の作成・保存を怠った場合も同法第120条により50万円以下の罰金の対象となり得ます。溶接災害は火傷・感電・じん肺など重篤化しやすいものが多く、教育を実施していた証拠を示せるかどうかは企業の責任の所在にも直結するため、特別教育 要否チェッカーで対象業務・時間数を確認したうえで、記録の整備まで進めておくことをおすすめします。

よくある質問

Q. アーク溶接の特別教育は、具体的に何時間受ければよいですか。

2026年時点の規定では、安全衛生特別教育規程第5条に基づき学科11時間+実技10時間の合計21時間です。学科はアーク溶接に関する知識、アーク溶接装置に関する基礎知識、作業の方法に関する知識、関係法令などの科目で構成され、実技はアーク溶接装置の取扱いおよび作業の方法について10時間以上行います。

Q. ガス溶接も同じ特別教育で足りますか。

いいえ。ガス溶接・溶断等の業務は労働安全衛生規則第36条第3号のアーク溶接等とは異なる枠組みで、ガス溶接技能講習の修了が必要とされる業務です。アーク溶接機を用いる作業とガス溶接機を用いる作業のどちらに労働者を就かせるかを正確に区分したうえで、それぞれに応じた教育・講習を実施する必要があります。

Q. すでに溶接の実務経験が長い作業者にも、この特別教育は必要ですか。

実務経験の長さにかかわらず、アーク溶接等の業務に労働者を新たに就かせる場合は、原則として特別教育の修了が必要です。実技教育の一部が省略できる場合があるかどうかは個別の事情によるため、所轄の労働基準監督署にご確認ください。

Q. 特別教育の記録は、何年保存すればよいですか。

労働安全衛生規則第38条により、受講者・科目・時間数・実施年月日等の記録を作成し、実施日から3年間保存する義務があります。作業者の入社日や退職日は起算点になりません。

Q. 特別教育を実施せずに作業させると、どうなりますか。

労働安全衛生法第119条により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となり得ます。また記録の作成・保存を怠った場合は同法第120条により50万円以下の罰金の対象となり得ます。

まとめ

  • アーク溶接等(安衛則36条第3号)の特別教育は学科11時間+実技10時間=合計21時間
  • ガス溶接等は別枠組み(ガス溶接技能講習)であり、アーク溶接等の特別教育とは対象・時間数が異なる
  • 実務経験の長さでは代替できず、業務に就かせる前に必ず特別教育を修了させる必要がある
  • 記録は安衛則38条により実施日から3年間保存し、未実施・記録不備は安衛法119条・120条の罰則対象になり得る
  • 自社の作業者に必要な特別教育や時間数を確認したい場合は、特別教育 要否チェッカーで確認するところから始める

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参考にした一次情報

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