学科・実技の時間

チェーンソーによる伐木等業務の特別教育|対象作業と学科・実技の科目

運営・編集:安全教育台帳編集部

チェーンソーの伐木作業に、なぜ「特別教育」が必要なのか

「チェーンソーを使わせるのに、資格や講習は必要なのか」「必要だとして、何時間の教育をすればよいのか」。林業だけでなく、建設・造園・ビルメンテナンス・電力設備の維持管理など、敷地内の立木を扱う現場からよく寄せられる質問です。特別教育(危険・有害業務に就かせる前に、事業者が業務ごとに実施しなければならない法定の教育)の対象業務は約49種類あり、その一つがチェーンソーによる伐木等の業務です。この記事では、対象となる作業の範囲、学科・実技それぞれの時間数、記録の残し方までを、根拠条文とあわせて整理します。

結論:チェーンソーで立木を伐る・かかり木を処理する・造材する業務は、業種を問わず特別教育の対象

結論から言うと、業種にかかわらず、チェーンソーを用いて①立木の伐木、②かかり木の処理、③造材(伐った木を丸太に加工する作業)のいずれかを行わせる場合、労働安全衛生規則(安衛則)第36条第8号に基づき、就業前に特別教育を修了させなければなりません。林業事業者に限った規制ではなく、建設現場での支障木伐採や、ビル・工場敷地内の樹木管理でチェーンソーを使う場合も対象になります。

必要な教育は学科9時間以上・実技9時間以上の合計18時間以上で、安全衛生特別教育規程第10条に科目と時間の内訳が定められています。修了させないまま業務に就かせることは、労働安全衛生法(安衛法)第59条第3項の義務違反にあたり、同法第119条により50万円以下の罰金の対象となり得ます。

対象業務の範囲と法的根拠

根拠条文:安衛法59条3項・安衛則36条8号

特別教育を行う義務そのものは、労働安全衛生法第59条第3項に定められています。事業者は「危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるとき」に、その業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行わなければなりません。

この「厚生労働省令で定めるもの」の具体的な一覧が労働安全衛生規則第36条です。チェーンソーの伐木等業務は同条第8号に、次のとおり定められています。

八 チェーンソーを用いて行う立木の伐木、かかり木の処理又は造材の業務

ポイントは、立木の胸高直径(目通りの太さ)による区分がないことです。かつては直径が一定以上の立木を対象とする特別教育と、それ以外を対象とする特別教育が別々に存在していましたが、2020年8月1日施行の改正で一本化され、太さを問わず対象業務となりました。改正の背景には、林業における死亡災害の約6割がかかり木処理を含む伐木作業に集中しているという実態があり、より実務に即した科目構成に見直された経緯があります。

学科教育9時間・実技教育9時間の内訳

具体的な科目と時間は、安衛則ではなく安全衛生特別教育規程(昭和47年労働省告示第92号)第10条に定められています。2026年時点の規定では、学科教育・実技教育とも下表のとおりです。

区分科目時間
学科伐木等作業に関する知識4時間
学科チェーンソーに関する知識2時間
学科振動障害及びその予防に関する知識2時間
学科関係法令1時間
学科計9時間
実技伐木等の方法5時間
実技チェーンソーの操作2時間
実技チェーンソーの点検及び整備2時間
実技計9時間
合計18時間

学科9時間+実技9時間=合計18時間という水準は、本サイトの特別教育の要否チェッカーに収録している他業務と比べても長めです。例えば低圧電気取扱いは学科7時間+実技7時間で計14時間、アーク溶接は学科11時間+実技10時間で計21時間、フルハーネス型墜落制止用器具の使用は学科4.5時間+実技1.5時間で計6時間です。チェーンソー伐木等は振動障害の予防やチェーンソー自体の点検・整備まで科目に含まれる分、実技・学科ともに比較的重い教育になっている点が特徴です。

教育時間は1人あたりの時間数のため、対象人数が増えるほど総研修時間も比例して増えます。例えば、これから伐木等の業務に配置する作業者が3人いる場合、1人あたりの教育時間(学科9時間+実技9時間=18時間)は、3人分では 18×3=54 で合計54時間にのぼります。社内講師で対応するか、登録教習機関にまとめて委託するかを検討する目安になります。自社で扱う業務ごとに必要な特別教育と時間数を横断的に確認したい場合は、特別教育の要否チェッカーで対象業務を選択すると、学科・実技の時間数と根拠となる号番号がまとめて表示されます。

自社で確認・対応する手順

  1. 対象作業の洗い出し:チェーンソーを使う作業が社内のどの部署・現場にあるかを確認します。林業部門だけでなく、造園・外構工事、送電線沿いの支障木伐採、敷地内の枯れ木処理なども対象になり得ます。
  2. 未受講者の特定:対象作業に従事する(または今後従事させる予定の)作業者のうち、チェーンソーの伐木等特別教育を修了していない人を洗い出します。
  3. 特別教育の実施・受講:自社での教育実施が難しい場合は、林業・木材製造業労働災害防止協会や各地の労働基準協会、民間の教習機関が実施する講習を受講させます。
  4. 記録の作成・保存:教育を行ったときは、受講者名・科目・時間数・実施日・修了の確認方法などを記録し、安衛則第38条に基づき3年間保存します。
  5. 元請・監督署対応への備え:建設現場では元請から安全書類の一環として受講記録の提出を求められることがあります。個人ごとの受講日・科目が一覧できる形で管理しておくと、提出や労働基準監督署の調査にも対応しやすくなります。

注意点・誤解しやすいポイント

技能講習・免許との違い:チェーンソーの伐木等業務は「特別教育」であり、就業制限業務に必要な「技能講習」や「免許」(安衛法第61条・施行令第20条)とは制度が異なります。特別教育は事業者が自ら(または委託して)実施する教育で、修了証の様式・交付義務が法定されているものではありません。技能講習修了証のように登録教習機関が発行する法定書式とは性質が違う点に注意が必要です。

「3年保存」は保存義務の下限であって更新期限ではない:安衛則38条の3年保存は、記録を最低限いつまで残しておくかという下限規定です。特別教育そのものに法定の更新義務はなく、3年が経過したからといって再教育が必要になるわけではありません。保存期間が過ぎた記録を破棄してよいという意味であり、「3年ごとに受け直す」義務ではない点を混同しないよう注意してください。

「更新義務なし」と「おおむね5年ごとの安全衛生教育」は両立する:上のとおり特別教育そのものに更新義務はありませんが、これとは別に労働安全衛生法第60条の2が、危険有害業務に現に就いている労働者への安全衛生教育を事業者の努力義務として定めています。同条に基づく危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育に関する指針(安全衛生教育指針公示第1号)は、対象者として「特別教育を必要とする業務に従事する者」を明示したうえで、別表14に「チェーンソーを用いて行う伐木等の業務従事者安全衛生教育」のカリキュラムを掲げています(細目は基発0317第2号・令和3年3月17日)。実施の時期は、同指針が「定期教育」と「随時教育(取り扱う機械設備等が新たなものに変わる場合等)」の2種類を定めており、その周期の目安を安全衛生教育等推進要綱(平成3年1月21日付け基発第39号・最終改正 平成28年基発1012第1号)の別表が「定期(おおむね5年ごとに)」としています。努力義務であって法定の受講期限ではないため、受けていないこと自体が直ちに違反となるわけではありませんが、林業では安全衛生団体等が定期的に開講しており、発注者や元請から受講歴の提示を求められることがあります。なお同指針は、実施した教育の記録を個人別に保存することも求めています。

旧・区分特別教育を修了している場合の扱い:2020年8月の一本化前に、胸高直径に応じた旧区分の特別教育を修了している作業者を新区分の業務に就かせられるかどうかは、実務上の取り扱いが分かれる場合があります。対象業務の該当性や、旧教育修了者への省略規定の適用など個別の取り扱いは、所轄の労働基準監督署や労働安全コンサルタント等の専門家にご確認ください。

かかり木処理・造材も対象に含まれる:「伐木」という言葉から立木を倒す作業だけを想像しがちですが、条文上は「伐木、かかり木の処理又は造材」のいずれか一つでも行えば対象です。倒した木を丸太に加工する造材だけを行う作業者にも、特別教育の受講が必要になります。

作業者ごとの受講状況や3年保存の記録を紙やExcelで管理していると、誰がいつ何を受講したか、保存期間が近い記録がどれかを追いにくくなりがちです。無料トライアル(14日間・クレジットカード不要)では、作業者と受講記録をクラウド上で一元管理できるため、関心があれば/signupから試すことができます。

まとめ

  • チェーンソーで立木の伐木・かかり木の処理・造材のいずれかを行わせる場合、業種を問わず安衛則第36条第8号に基づく特別教育が必要です。
  • 教育時間は安全衛生特別教育規程第10条により学科9時間以上・実技9時間以上、合計18時間以上と定められています(2020年8月1日施行の統合改正による現行水準)。
  • 未実施は安衛法第59条第3項違反にあたり、第119条の罰則(50万円以下の罰金)の対象になり得ます。
  • 教育を行ったら、受講者・科目・実施日等を記録し、安衛則第38条に基づき3年間保存する必要があります。
  • 自社に該当する作業者がいないか、まずは特別教育の要否チェッカーで対象業務と時間数を確認することから始めるとよいでしょう。

よくある質問

Q. チェーンソーを使うすべての作業が特別教育の対象になりますか。

対象となるのは、チェーンソーを用いて行う立木の伐木、かかり木の処理、造材の業務です(安衛則第36条第8号)。庭木の剪定など、伐木・かかり木処理・造材のいずれにも当たらない軽微な作業の扱いについては、所轄の労働基準監督署に個別に確認することをおすすめします。

Q. 立木の太さによって必要な教育が変わりますか。

2026年時点の規定では変わりません。2020年8月1日施行の改正で、従来あった胸高直径による区分が一本化され、太さを問わず学科9時間・実技9時間の同一の特別教育が適用されます。

Q. 特別教育に法定の修了証様式はありますか。

技能講習修了証のような法定様式・交付義務はありません。ただし、安衛則第38条により受講者・科目等の記録を作成し3年間保存する義務があるため、実務上は修了を証明できる記録・書面を残しておく必要があります。

Q. 特別教育を実施しないまま作業させてしまった場合、罰則はありますか。

労働安全衛生法第59条第3項の義務に違反した場合、同法第119条により50万円以下の罰金の対象となり得ます。記録の未作成・未保存についても同法第120条が罰則を定めています。

Q. 教育の一部を省略できる場合はありますか。

安全衛生特別教育規程には、他の資格の取得状況などに応じて科目の一部を省略できる規定が置かれている場合があります。省略規定の適用可否は作業者ごとの資格・受講歴によって異なるため、自己判断で省略せず、所轄の労働基準監督署や登録教習機関、労働安全コンサルタント等の専門家にご確認ください。

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特別教育は一度きり。手間になるのは、そのあと3年の保存です

安全教育台帳は、実施した特別教育を作業者ごとに記録して受講履歴として積み上げ、 安衛則38条の3年保存が満了に近づく記録を先に知らせます。記録簿・修了証・有資格者名簿の 出力まで、作業者の入退社をまたいで1つの台帳にまとまります。

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